建設政策課 森下

取り組み内容
市営住宅の維持/管理において、建物/敷地内の日常的な点検(日常点検)による予防保全は欠かすことができません。
日常点検は有資格者以外の事務担当者でも実施することができますが、事務担当者は建物/設備についての知見が少ない、所見の有無や対応の要否等の判断に不安がある、人により判断にばらつきが生じる可能性が高い等の理由から、中津市では点検実施者を有資格者(市職員)に限定しています。
しかし、管理する全住宅について、それぞれに現地調査を行い、報告書の作成・決裁、修繕等の対応指示・確認等を行う必要がある日常点検は業務負担が非常に大きく、マンパワー不足のため、計画どおりの点検実施は実現困難な状況が続いていました。
そこで、日常点検業務におけるマンパワー不足を解消するため「誰もが・無理なく・確実に点検できる」よう日常点検をサポートしてくれる機能/仕組みを持ったアプリを開発したいと考え、Google AppSheetを使用してアプリの開発に取り組みます。
▼アプリ開発の概要
日常点検の一連業務(事前準備~報告~点検後の修繕対応完了確認まで)デジタル化
住宅情報・配置図・前回調査履歴等、点検に必要な情報をアプリ内に格納・一元管理
調査員は、電子化した点検チェックシートを使用してアプリ上で点検結果を入力
入力された点検結果は管理者や保全担当者へ自動通知
保全担当者は通知された点検結果に基づく修繕・保全管理の対応状況をアプリ上で報告し、完了確認を受ける
上記の結果、タブレット1つで事前準備から点検後の修繕対応・完了確認までの業務が実施可能となり、一連の業務が省力化されます。
有資格者以外(事務担当者)でも、安心して点検できる仕組み・機能をプラス
デジタル化した点検チェックシートに、点検マニュアル該当部分の参照機能を埋めこみ、調査員が点検を実施しながら必要な時に容易にマニュアルの該当部分の確認ができるようにすることで、調査員の調査能力向上と平準化をはかります。
点検を1次判定と2次判定に分割し、1次判定者(事務担当者等)が点検マニュアルを確認しながら現地確認・仮判定を行い、2次判定者(有資格者)がアプリに記録された1次判定結果を確認して最終的な判定・対応を確定させる2段階判定制度を採用することで、事務担当者の不安の軽減・有資格者の業務負担の軽減・調査結果の適正化を目指します。
点検実施状況等の進捗状況を見える化
点検結果や点検後の対応等の進捗状況を地図情報と連動させて「見える化」することで、関係者全員が全住宅の点検結果/対応状況をリアルタイムで確認できるようになり、調査員のモチベーションアップにつながるほか、点検未実施や点検後の対応遅延/対応漏れの発生を抑制する効果も期待されます。

▼取り組みを通した気づき
アプリの開発に際しては、日常点検業務を細分化したうえで「人にしかできない業務」/「有資格者にしかできない業務」「それ以外」という視点で業務を分類していくことから取組をスタートさせました。
その結果「有資格者にしかできない業務」/「有資格者以外でも何らかのサポートがあれば実施可能な業務」/「デジタルツールの活用が可能な業務」が明確になり、アプリに必要な機能や仕組みの具体的なイメージを固めることができました。
働き方の見直しにおいては「マンパワー不足」という言葉で検討を終えるのではなく、具体的にどの部分でどのようなマンパワーが不足しているのかという観点から業務を詳細に確認・分析していくことが大切だと感じました。
担当者のコメント
日常点検サポートアプリは、当初、日常点検のみを対象としたものとして開発をスタートさせましたが、関係機関から本アプリを日常点検以外の保全管理業務にも応用できないかとの意見をいただきました。
そこから現時点では、通常保全や災害時等の緊急点検業務にも活用可能なアプリとして開発を進めています。
最終的には、外部委託をしている法定点検結果のRPA入力までを実現し、市営住宅の点検/管理に関する情報をアプリに統合/一元化していくことで、予防保全の徹底や計画修繕による経費の節減、職員の業務負担の軽減等の実現につなげていきたいと考えています。